私が防音室施工という業界(?)において、他社様との差別化という点でお伝えしたいのは、音楽室には大きく分けて4つの重要な要素があり、それを総合的に満たすような部屋を作る、ということです。また、そのような部屋を施工するため、ピアノ調律師および二級建築士としての知識・経験を活かしています。
その4つの要素とは「遮音性能」「室内音響」「室内環境」「室内デザイン」です。それぞれにつきまして、簡略に要点を述べたいと思います。
①遮音性能
防音室を作りたいと思われるお客様が、まず要望されるのが、近隣の住居や、住宅内の他室などに対する、十分な遮音性能です。これにつきましては、当工房に限らず、普通の防音工事会社でも十分なノウハウを有しているとは思います。
(ただし、一般の工務店やハウスメーカーなどは、遮音の基礎知識をあまり理解しておらず、ただ壁に吸音材を詰め込んだり遮音シートを貼ったりすれば、それで防音ができると考えているところもあるようです。そのようなところに依頼すると、十分な遮音性能をもたない防音室?ができてしまうことになりますので、ご注意ください。)
②室内音響
上記のように、遮音性能は普通の防音工事会社でも大丈夫なのですが、その部屋(音楽練習室、ピアノレッスン室、オーディオリスニングルームなど)の室内音響のことになると、怪しくなってくる防音会社があります。実際、これまでいただいたご相談の中にも、「防音室を作って近隣への音は小さくなったのだけど、その部屋で弾く楽器の音がたいへん悪くなってしまって悩んでいる」というケースがいくつもあります。
これは、その防音工事会社が、音楽や楽器のことについて、どれくらいの知識とセンスを持っているかということに関係します。防音室は、音楽を楽しむための部屋なのですから、室内音響特性は、きわめて重要な要素ですから、そこでどのような楽器が演奏され、どのような曲が演奏され、そしてお客様はどのような音楽を好んでおられるのかということを理解して、それを実現する能力が必ず必要です。
しかし防音工事会社の中で、その能力を有しているところは、必ずしも多くないのが現状なのです。(防音工事会社の中には、交通騒音対策を本業としているところも多く、そのようなところは音楽に対する知識や理解力を持ち合わせていない場合があります)
③室内環境
ここまで書いてきました遮音性能や室内音響は重要な要素ですが、音楽室の良さは、それだけで決まるわけではありません。その部屋が快適であるかどうかは、音楽活動をしたり音楽を楽しむための大切な要素です。特に防音した部屋は、密閉度が高くなりますので、空調・換気などに対する配慮は重要です。
④室内デザイン
部屋のデザインは、音とは関係がないと思っておられる方がいらっしゃるかもしれませんが、ほんとうにそうでしょうか。確かにサウンドレベルメーター(騒音計)などの機械で計測した値は、デザインとは関係がないかもしれません。しかし音楽を楽しむ時に、その部屋のデザインは、私たちの感受性に大きな影響を持っているのではないでしょうか。
室内デザインにおいては、壁のクロスや窓のカーテンなどのファブリックなどが重要な要素であることは言うまでもありませんが、私は、これまでの経験から、天井の高さというものが、音楽を楽しむ人に与える心理的影響というものを重視しています。天井が高いことは、開放感や余裕、大らかさといったものを感じさせてくれます。そのため私どもは、音楽室を作るときは、可能な限り天井を高くするようにしています。このことは、(2)の室内音響の点でも、たいへん良い効果をもたらします。見た目だけでなく音自体も、開放感と大らかさを持ったものになります。
ところが普通の防音工事会社が作る防音室の中には、天井がきわめて低いものが少なくありません。天井に手が届いてしまうようなものや、ヴァイオリンを弾くと弓が天井に当たりそうになってしまうようなものまであります。防音室は、二重床や二重天井にする場合が多いので、どうしても天井が低くなってしまう傾向はあるのですが、それは設計段階のいろいろな工夫によって解決することが可能です。
ただし、そのためには防音室(音楽室)を設計し施工する者が、防音のことだけでなく、建築物の全体構造について正しい知識を有していることが必要です。しかし防音工事会社の中には、その能力のないところも多く、何の工夫も無く、天井の低い部屋を作ってしまっているケースがたいへん多いのは残念なことです。
さて、当工房では、上記(1)から(4)までの要素に、しっかりと配慮し、それらを総合的に満たす、良質の音楽室(防音室)をつくっております。それができるのは、私が単なる防音工事屋でもなく、単なる住宅施工業者でもなく、音楽と建築の両方の専門家であるからなのです。